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【体験談】私なりの乳がん再発・転移不安との向き合い方  〜 part.2 藤森さん~

2023.04.10

藤森香衣さんプロフィール
11才からモデルを始め、広告、CM、テレビなどを中心に活動。乳がんで友人を亡くした事をきっかけに、検診の重要性を知った直後、自分のしこりを発見、2013年4月、右乳房全摘出及び、同時再建手術。
術後すぐに早期発見の重要性を伝えようと自身の病気を公表し、モデルの仕事も続けながら、講演活動などを行っている。サバイバーや支える全ての人が孤独を感じずに、よりよく生きる社会を実現するため、2016年にNPO法人C-ribbonsを設立、代表理事を務める。

マインドフルネスは、気持ちをフラットな状況に戻してくれるもの

― まず、がんの告知を受けたときの当時のお気持ちを教えていただけますか?

藤森さん:2012年の12月に乳がんの告知を受けました。その2年前から、胸にしこりがあって疑いの気持ちはあったので、泣き崩れるというようなことはありませんでしたが、日が経つごとに実感が湧いて、辛くなっていきました。

告知直後が特に苦しかったと答えるがん経験者の方が多いのですが、私の場合はそれが一か月続きました。しかも年末年始で親戚や友人に会うにも、病気を隠しながら他の人が楽しく過ごしているのを見なければいけなかったのがこたえました。

今、思い出しても怖いのですが、数秒前には「がんばろう!」と思っていたのが、次の瞬間には急に、床が無くなってどこまででも落ちてしまうような感覚に陥るということが一日の中でも何回もありました。

病気のことを仕事の人と親にしか言えなくて、当時は乳がんの患者さんをサポートしている人や団体も今ほどはなくて、誰にも言えず孤独でした。

独りぼっちでつらい1か月をすごしたことが、今のC-ribbonsの活動の原点です。あんなつらい思いをする人が一人でもいなくなるようにと思い、支援団体を立ち上げました。

― 再発の不安は今でもありますか?

藤森さん:一年に一回必ず健康診断を受けに行くのですが、その時は告知を受けたときの記憶がよみがえってきて手に汗をかきます。エコーでも技師さんがゆっくりみていると何かあるんじゃないかと震えがきたり。

初めての時よりもがんについての知識がある分、恐怖が大きいんです。エコーやマンモグラフィで結果を待っている待合室でも呼吸が浅くなってしまうので、そういうときは、マインドフルネスの瞑想のやり方で深呼吸をしながら心を整えるようにしています。

マインドフルネスは、気持ちをいい方向に持っていってくれるというものではなく、フラットな状況に戻してくれるものです。

それによって、こういう風に考えればいいんだと、自分を客観視できるようになります。それがマインドフルネスのいいところだと思います。

悪いことが次々と頭にかけめぐるようになったら危険信号

ー 今、マインドフルネスのお話がありましたが、藤森さんがマインドフルネスをやってみようと思ったきっかけを教えていただけますか?

藤森さん:がん患者さんの支援をするにあたり、何かしらの方法でのメンタルケアはやりたいと思って情報を集めていました。

その中で、不安なことがあっても「まぁいいか」と思える人と、悪い考えに執着してしまう人がいて、そういった考え方のパターンを知る「認知行動療法」というものがあることを心理カウンセラーの友人を通じて知り、頭の中をフラットにする方法としてマインドフルネスがある事も同時に教わりました。

当時、通っていた鍼灸師の先生には「藤森さん、呼吸が浅くなっていますよ」とよく言われていたんです。

「呼吸が浅くなっているのは、体が常に緊張しているような状態。脳が本来のフラットな状態じゃないから脳が混乱し、悪いことを妄想し続けてしまう。その妄想スイッチを切るのがマインドフルネスなんだよ」と心理カウンセラーをやっている友人に教えていただきました。

悩んでいる方を支援するのであれば、まず私自身がフラットに心が整っていないといけないということで、私自身が実践してみようと思ったのがきっかけです。

ー 藤森さんは、マインドフルネスを日常の中でどのように取り入れているのでしょうか?

藤森さん:毎日メディテーション(瞑想)をするのもいいですが、それは大変なので、まずは気づいたときにやるくらいでもいいと思います。マインドフルネスというと、瞑想とか座禅みたいなものを思い浮かべる方は多いと思うのですが、実際はもっと色んなアプローチがあるんです。

私は、考えすぎちゃっているな、心が変な方向にいっているなというときには、アロマテラピーをします。五感を使うことで気分がフラットになりますし、香りを選ぶところから心が整っていく感覚です。

メンタルが落ちているときって、つい「万が一、〇〇になったらどうしよう」ってあれこれ妄想してしまったりしますよね。そんなときに、解決するための方策を考えられるフラットな心の状態に戻してくれるのがマインドフルネスです。

そういうときに、問題を直接的に解決してくれるわけではないけれど、解決するための方策を考えられるフラットな心の状態に戻してくれるのがマインドフルネスです。

私の場合は、悪いことが次々と頭にかけめぐるようになったら危険信号ですね。それを感じたら、すぐにマインドフルネス。そうすると、落ち着いて一個一個やっていけばいいんだなというところに戻れるんです。

瞑想をしなくとも、お料理や運動をするというのもマインドフルネスにつながる

ー なるほど。マインドフルネスというワードは聞いたことありましたが、よく知りませんでした。特にどこかに通う必要もなく、日常に取り入れやすいものなんですね。

藤森さん:そうですね。 C-ribbons の活動をしている傍らで、がん経験者の方からメンタルの悩みについての相談を受けることもあって、やっぱり一番は専門家に見てもらうべきなので、「カウンセリングやがんの相談支援センターに行ってはどうか」とアドバイスするのですが、抵抗がある人が多いんですよね。

そういうときにマインドフルネスなら、お散歩する、瞑想をするという自分ひとりで簡単にできるので、取り入れやすいみたいです。

あとは、自分の病気のことだけじゃなくて、子育てのこと、親の介護のことで悩みを抱えている方も多くいらっしゃいます。なかなかカウンセリングに行く時間すらとれない方もいると思うので、そういった方も日常にマインドフルネスを取り入れることで少しでも心の状態を軽くできるといいのではないかなと、思っています。

だれでもイライラすることはあります。そんな時に心をフラットにする方法があるということを知ってほしいですね。マインドフルネスと聞くとスピリチュアルなものと思ってしまう方もいるかもしれませんが、五感を使って脳の状態をフラットにするのがマインドフルネスの本質だそうです。

瞑想をしなくとも、お料理をするとか、運動をするというのもマインドフルネスにつながるということを知らない人もまだ多いですよね。

たとえば、好きなものを作ろうと思ってお醤油などを計量したり、火加減をみたりしながら料理に集中していたら、悩み事があったとしても、その最中は余計なことは考えないですよね。「五感を使って脳のスイッチを切り替える」。これがマインドフルネスの入り口だと思います。

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