【女性がかかりやすいがん】大腸がんとは?女性の罹患数・5年生存率も解説

2023.04.25

女性特有のがんと言えば、子宮頸がんや子宮体がん、卵巣がん、乳がんなどをイメージする方が多いのではないでしょうか。

実際、女性の罹患数が最も多いのは乳がんですが、実は大腸がんはその次に多いがんなのです。

大腸がんとは、大腸の粘膜に発生するがんで、良性ポリープが大きくなる際にがん化するものと、粘膜の細胞ががん細胞へ変化するものがあります。

食生活の欧米化の影響で大腸がんの罹患数は増加傾向にあります。

今回は、大腸がんに注目して、女性の罹患数や5年生存率、治療法などについて詳しく解説します。

女性の大腸がんの罹患数

公益財団法人日本対がん協会の「がんの部位別統計」を参考に、大腸がんの罹患数に男女差はあるのか確認していきましょう。

部位別がん罹患数(2019年)

2019年のデータによると、大腸がんの罹患数は男性87,872人、女性67,753人でした。

女性の方が、男性よりも罹患数は少ないものの、他の部位と比べて比較的多くの人が罹患しています。また、注目すべきは罹患数よりも罹患割合でしょう。

部位別に見た女性のがん罹患割合を比べると、他の部位に比べて最も多い乳房の22.5%に次いで、大腸がんが15.7%と非常に割合が高い結果となっています。

大腸がんの5年生存率

ここでは、大腸がんが原因の死亡のみに注目し、相対生存率※を紹介します。

※生存率には、「実測生存率」と「相対生存率」があります。
実測生存率は、がん以外の原因による死亡も含めた生存率です。
一方、相対生存率は、がんが原因による死亡のみに注目した生存率で「がんに罹患している人の実測生存率」を「がんに罹患していなかった場合の期待生存率」で割って算出します。

国立研究開発法人 国立がん研究センターの「特別集計:患者年齢・病期別の生存率」によると、大腸がんの5年相対生存率は次のとおりです(集計期間:2010年・2011年に診断された方の5年を経過した生存率)。

・全体……72.6%

・ステージI……95.1%

・ステージII……88.5%

・ステージIII……76.6%

・ステージIV……18.5%

ステージが進むにつれて5年相対生存率は低下する傾向にあります。

ステージⅢまでの5年相対生存率は比較的緩やかですが、ステージⅣになると大きく低下することが分かると思います。

このことから早期発見・早期治療がいかに重要かが分かると思います。

大腸がんのリスクを高める要因

大腸がんは、次の要因でリスクが高まるといわれています。

肉類・脂肪の摂取量が多い

肉類・脂肪の摂取量が多いと、大腸がんのリスクが高まるといわれています。

特に危険性が高いと考えられているのは、動物性タンパク質を含む赤肉、動物性脂肪です。

大腸がんの発生率が高い米国人が食事の中で摂取する脂肪の割合が非常に高く、また菜食主義者の大腸がん発生率が低いことから、このように考えられています。

野菜・果物の摂取量の不足

穀類や豆類などの食物繊維が主食のアジア人やアフリカ人は、肉類・脂肪の摂取量が多い欧米人と比べて大腸がんの発生率が低いため、食物繊維を十分に摂ることが大腸がんのリスクを軽減するといわれています。

また、食物繊維を多く含む食べ物には、がん抑制作用があるビタミンCや各種カロテノイド、葉酸、ヨウ素などが含まれていることも関連していると考えられています。

喫煙・飲酒

喫煙と飲酒が大腸がんのリスクを高めるとの報告があるものの、明らかな関連性は認められていません。

また、飲酒に関しては葉酸やメチオニンの低摂取と重なることで大腸がんのリスクが高まるともいわれています。

大腸がんの治療法

【大腸がんの深達度】

出典:がん情報サービス|大腸がん(結腸がん・直腸がん)

https://ganjoho.jp/public/cancer/colon/

大腸がんは、大腸の壁の中を深く進んでいきます。どこまで到達しているのかを「深達度」といい、「T」に数字とアルファベットをつけたTis~T4bに分類され、数字が大きくなるほどに大腸がんが深く広がっていることを示します。

また、がんの進行度は「病期(ステージ)」で0期~IV期に分類され、数字が大きくなるほどに進行しています。ステージが決まる要素は、深達度とリンパ節転移・遠隔転移の有無です。

・0期……粘膜内に留まっている

・I期……固定筋層に留まっている

・II期……固定筋層の外まで浸潤している

・III期……リンパ節転移がある

・IV期……転移、腹膜播種(ふくまくはしゅ)がある

がん情報サービスの「大腸がん(結腸がん・直腸がん) 治療」では、大腸がんの治療法の種類と選択肢について次のように示しています。

臨床病期

治療法について簡単に解説します。

治療法について

大腸がんの術後合併症

大腸がんの手術後には、次の合併症が起きることがあります。

・縫合不全……縫合したつなぎ目から腸の内容物が漏れる。周囲に炎症が起こり、発熱や腹痛などの症状が出る。炎症が深刻腹膜炎の症状がある場合は、再手術でおなかの中を洗浄し、人工肛門を作ることが原則とされる

・腸閉塞……腸の炎症によって部分的な癒着が起きて腸管の通りが悪くなる。便やガスが出なくなり、腹痛や吐き気、嘔吐などの症状が出る。

・排尿障害……尿意を感じなくなったり残尿感が生じたりする。

・排便障害……排便のタイミングが不規則になったりガスが出にくくなったりする。多くの場合手術から1〜2か月経つと落ち着くが、便やガスが出ない場合、腸閉塞の前触れである可能性もある。

これらの合併症が起きた際は、症状の種類や程度に応じて対症療法を行います。

例えば、排便障害の中でも下痢が起きた場合は、脱水を防ぐためにこまめな水分補給を推奨されつつ、必要に応じて整腸剤が処方されます。

また、身体への負担が少ない内視鏡治療においても、次の合併症が起きる可能性があります。

・治療後の出血……血便が出ることがある

・大腸に穴が開く「穿孔」……腹痛や発熱などが起きる

入院中に出血や穿孔などの合併症が起こった場合は、内視鏡を用いて止血や穴をふさぐ処置を行います。手術が必要になるケースはごくまれです。

まとめ

大腸がんは、女性のがんの中でも罹患数・割合が高いがんです。

また、大腸がんを手術で完全に切除た場合、ステージ2の再発率は約13%、ステージ3は約30%です。再発率を下げるため、手術後に抗がん剤治療を行うことがあります。

再発においても早期発見・早期治療が重要なため、主治医の指示に従って定期検診を欠かさないようにしましょう。

■医療監修

西村医師

西 智弘 医師

2005年北海道大学卒。
室蘭日鋼記念病院で家庭医療を中心に初期研修後、川崎市立井田病院で総合内科/緩和ケアを研修。
その後2009年から栃木県立がんセンターにて腫瘍内科を研修し、2012年から川崎市立井田病院にて腫瘍内科・緩和ケアに従事。
また2017年に一般社団法人プラスケアを立ち上げ、暮らしの保健室や社会的処方研究所の運営に携わっている。
日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医。

出典:

・公益財団法人日本対がん協会の「がんの部位別統計」https://www.jcancer.jp/about_cancer_and_knowledge/

・がん情報サービス|大腸がん(結腸がん・直腸がん)

https://ganjoho.jp/public/cancer/colon/

・国立研究開発法人 国立がん研究センター「院内がん登録2010-2011年5年生存率集計」

https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2019/1214-02/index.html

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