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【後編】がん患者の家族を支えるコミュニティ「パパリボン」の今とこれから

2022.05.10

「がん患者さん同士のコミュニティはたくさんあるけれど、その家族を支えるコミュニティがほとんどなかった。妻ががんになって私自身の悩みを相談できる場所がないことに気付いたとき、支える側を支える輪が絶対に必要だと思ったんです」

代表の水谷さんは、パパリボン設立前をこう振り返ります。

前編では、メンバーが抱える「がん患者の家族ゆえの葛藤」や、パパリボンを立ち上げた経緯などを紹介しました。

後編となる今回の記事では、パパリボンが現在おこなっている活動の内容や、今後の目標についてお届けします。

【パパリボンのメンバー】  
・水谷真一郎さん(パパリボン代表、妻が乳がん患者)
・Ayakaさん(広報担当、パパリボンの設立メンバー)
・岡地里奈さん(パティシエ、17歳のときに母が乳がんで他界)

1.支える側ができること

※クリエイティブディレクター兼デザイナーとしても活躍している水谷さん

水谷真一郎(以下、水谷):医学で支えることにプラスして、コミュニティだからこそ解決できることってあると思うんです。たとえば、ファッションをはじめとする「患者さんの生活にまつわる情報」や「患者さんへの接し方」など、当事者同士だからこそ意見交換できることがある。また、パパリボンのようなコミュニティの存在は、支える立場の人にとって心の支えにもなり得ます。私は妻ががんになって以降、家族や仕事の環境が変わって生きる気力を失ったこともありました。私だけではなく、支える側の立場の人はそれぞれ深い悩みを抱えています。同じような境遇にいるからこそわかり合えることもあって、それはコミュニティが果たす大きな役割の1つです。

パパリボンのメンバーは、乳がん患者を妻に持つ私、水谷と、お母さんを乳がんで亡くしたリナさん、家族にがんの経験者がおらず、フラットな立場で物事が見られるAyakaさんの3名です。三者三様で立場が違うからこそ、それぞれの視点で情報を発信しています。

私は妻と共に日々がんと向き合っていますが、現在進行形のなかで感じる当事者としてのリアルな日常を伝えていきたい。過去の自分もそうでしたが、支える側が知りたいのはそういった生の声だと思うんです。

※亡き母と約束した「パティシエとしての夢」を叶えるために前を向き続けるリナさん

岡地里奈(以下、リナ):母ががんになって以降、私は友人から疎外されて心を閉ざしてしまったり、生きる活力を失ったりしたこともありました。そんな状態から前を向くきっかけをもらえたのは、パパリボンを通じて知り合った人たちのおかげでした。だからこそ私は、同じ境遇の者同士で支え合う場所が必要だと思っています。今も手探りの活動ですが、自分たちの等身大の姿を伝え続けていきたいですし、そこが他のコミュニティとパパリボンの違う点だと思います。

水谷:あとは、乳がんと向き合う女性たちに「隣を見てください、隣には男性がたくさんいますよ」と伝えたいですね。さまざまな家族と接していても、当事者の女性だけが頑張っている感じがするんです。でも、家族やパートナーをもっと頼って欲しい。私自身も照れ臭くてなかなか妻に言えませんが、身代わりになれないからこそ本当は命を懸けて守りたいし、命を懸けて喜ばせたい。「がん患者さん側の情報を発信するコミュニティ」と「支える立場側の情報を発信するコミュニティ」、二つの歯車が噛み合えば、私たちの活動のさらなる啓発につながると思っています。

2.がんになった人とその家族が“本当に”求めていることってなんだろう?

※モデルを経験したこともあるAyakaさんは「アピアランス(外見)面でもがん患者さんを支援したい」と意気込む

Ayka:がん患者さんは、病気の情報以外で術後の服装の着こなし方や運動の仕方など“ソフトな情報”も求めています。たとえば、乳房再建術を経験した後の女性は下着のサイズが変わったり、それまで着こなしていた服に違和感が生じてしまったりすることもあるんです。私の家族にがんの経験者はいませんが、だからこそ同世代の当事者の現実と私のような立場の女性との違いを冷静に見極められる。がん患者さんと支える立場の人の中間にいる存在だからこそ、当事者が本当に知りたいことをキャッチして、ものづくりに活かしたり情報発信を続けたりしていきたいです。

加えて、パパリボンでは「家族力」を高めるお手伝いもしていきたいですね。がん患者さんは、自分の病気のことで手一杯になることがあります。そんなときに「病気の知識をつけて患者力を高めましょう」と伝えるのは、酷な話だと思うんです。

だからこそ、隣にいる家族が一緒に勉強をしたり生活のサポートをしたりして、サバイバー以外の家族や周辺の人たちがみんなで手を取り合う社会を作っていきたい。イベントを通じた啓蒙活動をはじめ、自然な導線のなかで当たり前のように知識を付けられる機会を増やしていきたいと思っています。

水谷:パパリボンには多くのがん患者さんからダイレクトメッセージが届くのですが、実は、そのうちの約8割が女性なんですよ。これまでにない発信、等身大の発信をしているからこそ「私の旦那も日々こんな想いを感じているのかと思うと、凄く参考になりました」と言われます。

3.がんになっても当たり前のことを当たり前にできる世界を目指して

※リナさんが作るクッキーは、オンラインショップからも購入できる

リナ:私は2021年の9月に、東京都の千駄ヶ谷で365日の小さな洋菓子店 kanau(カナウ)というお店をオープンしました。クッキーの売上の一部は、乳がん治療への寄付や親をがんで亡くした子どもたちの居場所を設立するための資金に充てています。

私は幼い頃、よく母と一緒にお菓子を作っていて。お菓子作りをしている母の後ろ姿が大好きでした。そんな母から「リナが作るお菓子を通じてたくさんの人を幸せにして欲しい」と伝えられ、その言葉は今でも私の宝物。私がお菓子を作ることは、天国の母とつながることでもあるんです。

※クッキーには「がんを治せる病気にしたい」というリナさんの想いも込められている

水谷:私が乳がんの妻を支える立場として実感するのは「365日感じられる少しずつの幸せ」が大切だということです。たとえば、病院の送り迎えで立ち寄る店でのちょっとしたランチが楽しみになる。だからこそ、パパリボンでは当たり前の導線のなかに必要なものを配置していきたいと思っています。

そのひとつが、モバイルブティック構想です。私の妻もそうですが、酸素ボンベを携帯していると近所のスーパーや複合施設などに行きづらくなってしまいます。でも、味見をしたり試着したりする楽しみを奪いたくないので、体や心に良いものをモバイルブティックに取り揃えてお家の前まで届けたい。その発展形として、プロダクトを集めたモールを作る構想もしています。

※水谷さんは「頑張っている全ての人に小さな喜びを循環させる仕組みを作りたい」と意気込む

水谷:また、私たちが参加している新宿御苑での早朝プロジェクトにも足を運んでいただきたいです。ゆくゆくは、体に優しいスープを新宿御苑のマルシェで提供したり、病気が原因で仕事を失くしたりした方がマルシェで働くことによって給料を受け取れたりする仕組みも構築したい。そして、支える立場の男性への支援がまだまだ少ないと思っているので、“パパのための”学校や気軽に集える交流イベントも開催していきたいです。

いずれは、当事者や支える家族みんなが「私も参加したい」と思えるような場所を作っていきたい。クリエイティブを本職にしてきた人間として、身近なモノやコトから乳がんの世界を塗り替えていきたいと思っています。溢れるアイデアを水面下から地上に押し上げて、一つずつ実現していきたいですね。

【パパリボンのSNS】  
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