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ブレストキャンサーポートレート代表
岸あさこさん
【体験談】トリプルネガティブ乳がん発覚からの軌跡 ~ 細胞レベルで幸せを感じるようになった4年間~(前編)

2022.02.01

Profile

岸あさこさん
乳がん・女性患者の写真撮影|ブレストキャンサーポートレート代表
正看護師、衛生管理者、民間保険会社医学的アンダーライターなどを経て、オーストラリアの大学院へ留学。2017年起業のため帰国し福岡へ移り住んだが、トリプルネガティブ乳がんが発覚、右胸の部分切除手術を受けた。治療中、2018年にゴーウィ株式会社を設立。医療にまつわる知識と自らの乳がん経験を生かし、乳がん手術前後の胸の写真撮影と心のケアを兼ね備えた「ブレストキャンサーポートレート」スタジオを都内で開設。
病名
乳がん(トリプルネガティブ)
状況
術後経過4年。2018年に部分切除手術。抗がん剤と放射線による治療後、観察中。

乳がん発覚。現実を受け入れられない悩みの時期

ある日のシャワー中、たまたま胸に触れたときにゴムボールぐらいのしこりを発見しました。これはと思い、すぐに検査してもらえる病院を探して行きました。当時、私は看護師免許を持ちオーストラリアでヘルスケアに関係する学位を取得したばかりで皆さんに検診の重要性や病気に関してアドバイスしなければいけない立場だったんです。

ですが、本当に恥ずかしいことですが、自分が乳がんになるとは1%も思っていませんでした。当時11人に1人がなる病気と言われていたのにも関わらず、自分はならないという変な自信があったんです。

セカンドオピニオンの病院で出会った先生に、初めて見る珍しいタイプの「トリプルネガティブ」の乳がんということを知らされました。日本では情報がない状態だったのですが、先生から海外の論文を2つ手渡されたのです。読む前からなんとなく嫌な予感はしていましたが、記載のあった2例とも、残念な結果となっていて、とてもショックを受けました。

それから、しばらく病気を受容できない期間がありました。病気になっているということを受け入れられない、何か助かる方法があるのではないか、どうにかして否定したいという気持ちでした。

一般的な乳がんで早期発見であれば生存率も比較的高いと思うのですが、トリプルネガティブは、比較的に珍しいがんで、助からなかったケースの論文を見てしまったので絶望感がとても強かったです。だから私の場合、これ以上、病気について自分から調べるということはできなかったです。

誰かに聞いてほしい、相談したいという気持ちよりも、今後の人生をどうしたらいいのか?ということと死への恐怖や孤独感でいっぱいでした。

自分否定から始まり、自分をどう変えていくかを考えることで見つけた、心地良さ

私の場合、一番最初は「自分が悪かった」という根拠のない自分否定の時間が続きました。

食べ物がいけなかった、お酒を飲みすぎていたのが悪かった、ストレスフルがいけなかったといったような、全部自分のせいだと思う時期がありました。きっと多くの方もそうやって自分を責めて、追い込んでしまう時期があると思います。

しかし、それは良い反応だと私は思うのです。それまでの自分を振り返り、これからの自分をどう変えていくか考え直す良い機会にできるからです。

私がどう向き合ったかというと、まずはなぜストレスフルだったのか、どう改善していけるのかを徹底的に考えました。以前はストレスを感じるたびにお酒を飲んで発散をしていたんですが、それをスパッとやめました。

そんな風にライフスタイルをちょっとずつちょっとずつ改善していくと、今度は自分の性格のことも考えるようになりました。私は、なんでもマイナスに考えてしまいがちだったので、何事もポジティブな側面を見つけて良い方向に考えるようにしようとここまでやってきました。

今では、人とのつながりや絆を感じることでストレスを発散できています。それが心地よく自分に合っていて、お互いに成長し合える人とのつながりが大切だと思えるようになったんです。

ブレストキャンサーポートレート代表
岸あさこさん

支えになったのは、“がん友”

闘病中や辛かった時に支えになってくれたのは、乳がんの患者さんやがんを経験された友達です。私は「がん友」って呼んでいます。

がん友って面白いんです。学歴も年齢もなにも関係なく仲良くなれます。

ただステージがあまりにも違っていると仲良くなれないかもしれません。例えばステージ0の人が辛いと言っていることは、ステージ4の人からすると「私の状況に比べたら大したことない」と思われてしまうかもしれません。「あなたステージいくつですか」という質問は、「年収いくらですか」と聞いているようなものだと私は思います。

ある程度、ステージや治療法が似ているような人たちと話せることがメンタル面でも良いと感じています。

というのも、ステージ0の人でも、全摘出しなければいけない人にとっては人生の一大決心だと思います。それなのに自分よりステージが上の人からバッシングされるようなことがあると、とても辛いですよね。逆のパターンもあると思います。ステージ4にはステージ4の人の考え方があり、横並びになりにくいと思います。

私は4年前にFacebookで「乳がん ステージ0からステージ2まで」というグループを作ったのですが、できるだけ話しやすい人同士が集まるようにという配慮でステージを限定しました。

そのグループの中では、メンバーみなさんの経験を聞くことができます。

いろいろな経験者の話を聞き、自分で選択できるというのが、たった一つの運用ルールです。グループ内ではそれぞれが選んだ治療方針を否定する人もいないので、メンバーみんながお互いを認め合って、助け合える仲間づくりができます。

Facebookでグループを作った時期は、私が乳がんを告知されて受容できない時でした。人生のどん底にいる最中で、病院の中のサポート支援や精神科にいくということは何か違うと感じていました。なぜSNSに居場所を求めたかと問われれば、自分と向き合うだけの日々から一歩前進し、同じ境遇の人と話したかったという理由だったのかもしれません。

ないものは作る!「乳がん患者専門写真撮影スタジオ」の立ち上げ

そんなFacebookグループの中で、あるとき、「手術前に乳房の写真を撮影しているか」というアンケートをとりました。自撮りで撮影している人、撮影しておけば良かったと後悔している人がたくさんいることに気づきました。でも自撮りだと綺麗に撮れていないのが現実でした。

「安心できる乳がん専門の写真撮影スタジオがあったらどうですか?」と質問したら、「探したけど見つからなかった」という声や「あるなら利用したい」との反響が多くあり、「それなら作ってしまえ!」ということで立ち上げました。

しかし、ただサービスを提供するだけでは意味がありません。

悩んでいる患者さんに一歩踏み出してもらうために「スタジオで元気をもらう」ことが必要だと感じました。そこで、写真スタジオに来ていただく方が、今どういう心境かということを話す時間を撮影前に作り、メンタルケアにつながる取り組みをすることにしました。

スタジオに来てくださったときの表情と撮影後の表情がガラッと変わり、明るく帰る姿を見ると、「このスタジオを始めてよかったな、また頑張ろう」と勇気をもらうことができています。

数えきれないくらいの方を撮影した今、「このスタジオをずっと続けていく。そのためには自分が長生きしなければいけない」という責任感が確実に芽生えましたね。ですから、ずっと続けていくために自分がどうやって健康を維持して生活していくのかを常に考えながら行動しています。

実際、自分が元気で明るく過ごせるようになっているので良い相乗効果になっています。

後編はこちら

  • 2021年12月現在の情報を元に作成
  • がんを経験された個人の方のお話をもとに構成しており、治療等の条件はすべての方に当てはまるわけではありません。

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