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遺伝子検査(オンコタイプDX・マンマプリント)で、乳がんの再発・転移のリスクが分かる? 費用や検査の流れなどを解説

2023.07.23

遺伝子検査で乳がん再発や転移のリスクが分かる?オンコタイプDX・マンマプリントの費用や検査の流れなどを解説
※写真はイメージです

手術後の薬物療法をより効果的に行うために、がん細胞の特性を遺伝子検査で解析して有効な抗がん剤 を予測する場合があります。日本で行われている乳がんの遺伝子検査は、「オンコタイプDX (Oncotype DX)」と「マンマプリント(Mamma Print)」の2種類です。今回は、乳がんの遺伝子検査の目的や種類、費用、検査の流れなどについて詳しく解説します。

遺伝子検査の目的

乳がんの遺伝子検査には、「がん遺伝子パネル検査」「BRCA遺伝子検査」「オンコタイプDX検査」などがあります。目的に応じた遺伝子検査を受けることで、自分に合った術後の治療方針を決められるようになってきています。

中でも有名なのが「オンコタイプDX」や「マンマプリント」による遺伝子検査です。これらの遺伝子検査では、サブタイプに応じた術後の再発リスクや、抗がん剤の必要性や有用性を確認できます。どの医療機関でも同じ方法で行われるため、医療機関・検査担当者によって結果が異なることはありません。

抗がん薬治療の有用性の判断に役立つ遺伝子検査は2種類

オンコタイプDXとマンマプリントの違いについての表

オンコタイプ DX

オンコタイプDXは、アメリカのジェノミックヘルス社が開発した検査で、米国では保険適用となっています。再発に関与する21種類の遺伝子を検査することで、10年以内の再発の有無および確率を予測できます。再発スコアは0~100で表示され、以下のように分類されます。

18未満……低リスク
18以上31未満……中間リスク
31以上……高リスク

再発スコアを参考に、高リスクの方には再発予防として抗がん薬治療を行う、低リスクの場合はホルモン療法薬のみ使用するなど、より適切な治療方針の策定に役立てることができます。オンコタイプDXは、乳がん診療ガイドライン2022でも強く推奨されておりエビデンスレベルも高い遺伝子検査です。

対象となるのは、ルミナル Aまたはルミナル Bタイプ(ホルモン受容体陽性、HER2陰性)です。

胸の前でハートマークを掲げる女性

マンマプリント

マンマプリントは、オランダのアジェンディア社が開発した遺伝子検査です。ヨーロッパで広く用いられているだけでなく、米国でもFDA(日本の厚生労働省に似た機関)の承認を受けています。再発に関与する70種類の遺伝子のパターンを調べ、術後5年以内の遠隔転移のリスクを予測します。

「ハイリスク」「ローリスク」に分類され、ハイリスクの場合は抗がん薬治療の必要性が高いと判断されます。

検査対象は早期乳がんで、わきの下のリンパ節転移が3個までの方です。オンコタイプDXとは異なり、閉経の有無やホルモン受容体の陰性・陽性を問わず検査の対象となります。過去に切除した切除してから時間の経ったがん組織を検査に使うことはできないため、手術前の段階で検査を受けるかどうかを決めておく必要があります。

遺伝子検査の費用

オンコタイプDXとマンマプリントは、現在はいずれも保険適用ではないため、費用はクリニック・病院によって異なります。料金の目安として、40~50万円を想定しておきましょう。


<最新情報> 2023年7月7日追記
2023年7月5日 厚生労働省は、乳がんの遺伝子検査「オンコタイプDX」について、公的医療保険の対象とすることを決めました。2023年9月1日から適用となる見込みです。
検査の対象は、女性ホルモンに反応し、がんが増殖するタイプの早期患者に限定されます。

検査費の公定価格は43万5000円で、3割負担だと13万500円。
所得によっては、医療費の自己負担に上限を設ける高額療養費制度の適用となります。

がん治療には、遺伝子検査の他にもさまざまな場面で費用がかかります。がん治療の費用に関する体験談については、こちらをご覧ください。

マンマプリントに関する体験談

遺伝子検査 の流れ

オンコタイプDXとマンマプリントの検査の流れは以下のとおりです。

オンコタイプDX
(1) 手術(がん組織を採取・保存)
(2) 遺伝子検査を受けるかどうかを決める
(3) 受ける場合は検査会社へ検体を送る
(4) 3~4週間で検査結果の報告を受ける
(5) 結果に基づいて術後の薬物療法について検討する

マンマプリント
(1) 遺伝子検査を受けるかどうかを決める
(2) 手術(がん組織を採取し、すぐに検査会社へ送る)
(3) 約3週間後に検査結果の報告を受ける
(4) 結果に基づいて術後の薬物療法について検討する

このように、オンコタイプDXとマンマプリントには次の違いがあります。

・がん組織をすぐに発送するかどうか
・手術前に遺伝子検査を受けることを決めておくかどうか
・検査結果の報告にかかる時間

オンコタイプDXとマンマプリントでは対象者が異なるため、自身がどちらの遺伝子検査の対象になるのか主治医に確認しましょう。

まとめ

オンコタイプDXとマンマプリントは、いずれも術後の再発リスクおよび抗がん薬治療の必要性や有用性を評価する遺伝子検査です。日本では保険適用ではないため(編集部注:オンコタイプDXは2023年9月1日に保険収載される見込みです。)、費用はクリニックや病院で異なります。主治医と十分に話し合ったうえで、遺伝子検査を受けるかどうか、どの遺伝子検査を受けるのかを決めることが大切です。

また、検査結果に基づいて術後に抗がん薬治療を受けたからといって、必ずしも再発リスクが大きく低下するとは限りません。がんを経験した方は、再発に備えて定期検診を受ける、今後の治療に備えて費用面の対策を立てるなどしっかり備えるようにしましょう。

■医療監修

西智弘医師

西 智弘 医師
2005年北海道大学卒。
室蘭日鋼記念病院で家庭医療を中心に初期研修後、川崎市立井田病院で総合内科/緩和ケアを研修。
その後2009年から栃木県立がんセンターにて腫瘍内科を研修し、2012年から川崎市立井田病院にて腫瘍内科・緩和ケアに従事。

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