【女性がかかりやすいがん】胃がんとは?女性の罹患数・5年生存率も解説

2023.09.12

【女性がかかりやすいがん】胃がんとは?女性の罹患数・5年生存率も解説

女性がかかりやすいがんには、乳がんや子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんなどがありますが、実は胃がんも女性の罹患割合が多いがんです。

ピロリ菌感染や塩分が多い食事などがリスク要因とされています。

胃がんとは、胃の内側の細胞ががん化したものです。

また、胃の内側の壁が硬く厚くなりながら広範囲へ広がる「スキルス胃がん」と呼ばれるタイプもあります。

胃がんの代表的な症状は、胃痛や胃の不快感・違和感、胸やけ、吐き気、食欲不振などですが、初期段階では自覚症状がほとんどなく、進行しても無症状の場合もあるため、早期発見・早期治療には定期的に胃がん検診を受けることが重要です。

女性の胃がんの罹患数

日本対がん協会の「がんの部位別統計」を参考に、胃がんの罹患数や罹患割合、男女差などについて紹介します。

2019年のデータによると、胃がんの罹患数は女性が38,994人、男性が85,325人でした。女性のほうが男性よりも罹患数が少ないものの、女性特有のがんである子宮体部17,880人、卵巣13,388人、子宮頸部10,879人と比べて、比較的多くの人が罹患しています。

また、乳房の22.5%、大腸がんの15.7%、肺がんの9.8%に次いで、胃がんが9.0%と、4番目に罹患数が多いがんです。

出典:日本対がん協会「がんの部位別統計

胃がんの5年生存率

続いて、胃がんの相対生存率※を紹介します。

※生存率には、「実測生存率」と「相対生存率」があります。実測生存率には、がん以外が原因で亡くなった人が含まれます。一方、相対生存率は、がんが原因で亡くなった方のみに注目した生存率です。「がんに罹患している人の実測生存率」を「がんに罹患していなかった場合の期待生存率」で割って算出します。

国立研究開発法人 国立がん研究センターの「がん診療連携拠点病院等院内がん登録2010-2011年5年生存率集計報告書」によると、胃がんの5年相対生存率は次のとおりです。

※2010~11 年 5年生存率

・全体……71.4%

・ステージI……94.7%

・ステージII……67.6%

・ステージIII……45.7%

・ステージIV……8.9%

がんは、他のがんと同様にステージが進むほどに相対生存率が低下します。同じ消化器系のがんである大腸がんではステージ1と2の差が8%程度であるのに対し、胃がんだと27%も低下しています。このことから、早期発見・早期治療が重要といえるでしょう。

なお、ステージが進むにつれて5年生存率が低下し、再発率も高まります。再発した人の多くは、最初の手術から2年以内に再発しています。

胃がんのリスクを高める要因

胃がんのリスクを高める要因

胃がんの発症リスクには、生活習慣やピロリ菌感染などが関係しています。胃がんのリスク要因について詳しくみていきましょう。

ピロリ菌

ピロリ菌という細菌に感染すると、胃に炎症が起こります。感染が長く続くと慢性胃炎と呼ばれる状態となり、さらに感染が長期間持続すると胃粘膜の萎縮等が生じ、組織の一部から胃がんが発生する場合があります。詳しい感染経路は明らかになっていませんが、上下水道が十分に普及していなかった世代の人の多くが感染しています。呼気や便を調べる検査などでピロリ菌感染の有無を簡単に調べ、除菌を試みることも可能なので、医療機関で相談してみてください。

喫煙

タバコの煙には70種類の発がん性物質が含まれ、1日20本の喫煙によって非喫煙者と比べて胃がんリスクが2倍以上になるといわれています。

野菜・果物の摂取不足

野菜・果物を十分に摂ることで、胃がんのリスクが減少する場合があります。詳しいメカニズムは明らかになっていませんが、野菜・果物に含まれるカロテノイドやフラボノイド、イソチオシアネート、食物繊維などの成分が胃がんの発生に何らかの形で関与している可能性があります。

出典:国立研究開発法人 国立がん研究センター「野菜・果物摂取と胃がん発生率との関係について

高塩分食品摂取

胃の中の塩分濃度が高まると、粘膜がダメージを受けて胃炎が発生し、発がん物質の影響を受けやすくなるといわれています。胃炎が発生している状態では、胃がんのリスク要因となるピロリ菌感染も起こりやすいため、早期に食生活を改善することが大切です。

胃がんの家族歴

胃がんにかかったことがある家族がいる場合は、胃がんリスクが高まるといわれています。家族に胃がん患者が多い場合は、警戒したほうがよいでしょう。

遺伝性腫瘍にはリンチ症候群や遺伝性びまん性胃がん、リー・フラウメニ症候群などがあります。

胃がんの初期症状

胃がんは、早期の段階では自覚症状がほとんどありません。また、進行しても症状が現れないこともあります。

よくみられる症状は、胃の痛みや不快感、胸やけ、吐き気、食欲不振などです。また、出血による貧血や黒い便が起きることもありますが、これらの症状は胃炎や胃潰瘍などでも起こります。

また、がんが大きくなると食事がつかえたり体重が減ったりする場合もあります。胃がんを早期発見・早期治療するためにも、定期検診を受けましょう。

胃がんの検査方法

がんがあるかどうかを調べるためには、内視鏡検査やバリウムを用いたX線検査などを行います。内視鏡検査で胃の内部を調べ、疑わしい箇所を生検して病理検査を行うことで確定診断が可能です。

進行度を診断するための検査では、がんの深さや転移、周囲の臓器やリンパ節の状態を調べます。通常は造影剤を使用したCT検査を行いますが、MRI検査やPET検査も行われることがあります。

胃がんの治療法

胃がんの深達度

胃がんの深達度

出典:がん情報サービス「胃がん 治療

胃がんの治療法は、がんの進行度や性質、身体の状態に基づいて決定していきます。また、患者本人の希望や生活環境、年齢なども治療法を決める際の検討材料です。

がん情報サービスの「胃がん 治療」では、胃がんの治療法の種類と選択肢について次のように示しています。

胃がんの治療法の種類と選択肢

出典:がん情報サービス「胃がん 治療

治療法について簡単に解説します。

内視鏡治療

内視鏡治療とは、内視鏡で胃の内側からがんを切除する治療法です。

リンパ節転移の可能性が非常に低い早期がんにおいて、一度で切除できると考えられる場合に行います。

手術

内視鏡治療での切除が難しく遠隔転移もない場合は、手術でがんを切除することを検討します。腹部を20cm程度切開する「開腹手術」と、小さな穴を開けて器具を挿入して胃がんを切除する「腹腔鏡下手術」があります。

また、進行度によっては、胃の切除手術の際に残った胃と食道、腸などを縫い合わせ、食べ物の通り道を作り直すケースもあります。

薬物療法

薬物療法には、次の3パターンがあります。

  • 術前にがんを小さくするために行う術前補助化学療法
  • 手術後に再発予防を目的として行う「術後補助化学療法(アジュバント療法と呼ばれることが多い)」
  • 手術で切除困難な進行がんおよび再発がんに対して行われる化学療法

使用する薬の種類は次のとおりです。

  • 細胞障害性抗がん薬……がん細胞が増殖する仕組みの一部を阻害することで、がん細胞を攻撃する薬
  • 分子標的薬……がん細胞の餌となる特定のタンパク質の働きを抑える(供給を断つ)ことで、がん細胞が増殖・転移できないようにする
  • 免疫チェックポイント阻害薬……免疫ががん細胞を攻撃する機能を維持するための薬です

胃がんの術後合併症

  • 縫合不全……手術で切開した部位の縫合が不完全な場合に起こります。縫合箇所から胃の内容物が漏れ出し、周囲に炎症が起こることで発熱や腹痛などの症状が現れます。腹膜炎が起きた場合は、再手術が必要となります。
  • 膵炎・膵液ろう……膵臓周りのリンパ節郭清(切除)の手術時に一時的に膵液が漏れ出した状態です。膵液はタンパク質や脂肪を分解する酵素を含んでいるため、周囲の臓器や血管を溶かして感染や膿瘍の形成、出血などが起きる恐れがあります。
  • 腹腔内膿瘍(のうよう)……縫合不全や膵液ろうが原因で感染が生じることでお腹の中にできる膿瘍です。多くの場合、腹痛や発熱といった症状が現れます。抗菌薬で改善が期待できますが、場合によっては膿を外に出すためのカテーテルを体の中に一定期間入れておく必要があります。
  • 腸閉塞……お腹の中で腸管が癒着し、屈曲したりねじれたりすることで食べ物や消化液が通過障害を起こす場合があります。手術直後だけではなく、退院後、時間が経ってから発生することもあります。
  • その他……食後の動悸、発汗、めまいのほか、貧血が起きる可能性があります。

まとめ

胃がんは、乳がんや大腸がん、肺がんなどに次いですべてのがんに占める割合が多いがんです。

胃がんの治療法は、がんの進行度や性質、身体の状態、本人の希望や生活環境、年齢などを踏まえて検討します。

手術から2年以内の再発リスクの高さが指摘されているので、術後補助療法が終わった後も、医師の指示に従って定期検診を行いましょう。

■医療監修

西 智弘 医師
2005年北海道大学卒。
室蘭日鋼記念病院で家庭医療を中心に初期研修後、川崎市立井田病院で総合内科/緩和ケアを研修。
その後2009年から栃木県立がんセンターにて腫瘍内科を研修し、2012年から川崎市立井田病院にて腫瘍内科・緩和ケアに従事。
また2017年に一般社団法人プラスケアを立ち上げ、暮らしの保健室や社会的処方研究所の運営に携わっている。

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